そんな保育士の子どものお悩み相談にお答えします。

このページの内容は
- 制作活動で毎回「できない」を繰り返す子の対応
- いつも同じ絵しか描かない子の対応
- イメージが貧困な子の対応
保育士ができあがったものを見て、いい・悪いしか言わなければ、創造力は育ちません。
子どもが持っている力を思いっきり出して表現したものを保育士が、褒めて、認めてあげると、子どもは表現する楽しさが分かってきます。
もちろん、他の子が表現したものと比べる必要もないのです。
制作活動で毎回「できない」を繰り返す子
もっと素材と触れ合う経験を
幼児が表現できない場合、
- 「過去に表現したときのいやな経験が心の傷となっている」
- 「完ぺきさを求め、なんでもじょうずにしようとする」
- 「保護者から年相応の自立ができていない」
などの原因が考えられます。
いずれの場合も、紙を破く、段ボールを壊す、積み木を積んでは崩す、粘土をこねる、泥んこあそびをするなど、基本的なあそび体験が足りないと思われます。
素材と触れ合う経験をいつでも自由にできるようにするべきです。
その中で自分らしい表現が見え始めたら、Yくんの苦手な製作活動に導くようにしてみましょう。
気を付けたいのは、
- 「こんな形がいいよ」
- 「これでなくては」
のような制限をしないようにすることです。
制限は評価につながり、敏感な子はすぐに評価に反応します。
保育士は、子どものどんな活動も受け入れ、スキンシップしながら見守る姿勢を持ってほしいですね。
保育士は手を出さないほうがいい
子どもに、「大人のようにかかなくては」と思い込ませるのが怖いので、基本的に保育士は子どもが描くものや作るものに、手を出さないほうがよいでしょう。
その場は「いいよ。かきたくなったらかこうね。」とYくんの気持ちを受け入れて、イメージが膨らむようなお話をたくさんしてチャンスを待ちましょう。
また、環境を変えると気分も変わります。
床に座ってかいたり、立ってかいたりしてもよいですね。
気を付けたいのは、「この時間はこうさせなくては」と、保育士自身が追い込まれないようにすることです。
まとめ
生活経験が少ないと、創造しようにもできません。
ただ、制作や絵の表現だけで、Yくんは創造性がないと決めつけないようにしましょう。
運動や音楽、友だち関係など、ほかのことでYくんが得意なことを見つけて認めてあげます。
そして、作品に対してはどんな小さなことでもよいところを見つけて、「この前はこうだったけど、今度はここがとってもきれいね」などと褒めることで自信が持てるようにしてあげましょう。
いつも同じ絵しか描かない子
同じ絵を書いて自分を確認している
幼児の場合、気持ちが不安になると、描くことで自分を確認し、安定感を得ていることがあります。
ですから、同じ絵を描くことは決して悪いことではなく、「創造力がない」とも言えません。
Fちゃんも、家庭や保育園の中で、自分の居場所が確保できていなかったり、何かにストレスを感じたりしているのかもしれません。
保育士はちゃんと触れ合いながら、同じような絵でもそのつど違いを見つけ出し、「今度はだれをかいたの?」と、その絵を認めてあげましょう。
認められることでやがて心が安定し、成長とともにFちゃんの絵も自然に変わっていくと思います。
温かく見守ってあげたいですね。
イメージが膨らみやすい導入を
Fちゃんは、テーマに対するイメージがわいてこないのかもしれませんから、身近なテーマを選んでみてください。
そしてテーマに関連したお話をいっぱいするなど、イメージが膨らむような導入をくふうしてみましょう。
キラキラの目の女の子は、不思議と女の子たちがよく描きますが、このままいつまでも同じ絵をかき続けることは、まずないと思います。
まとめ
キラキラの目の女の子は、Fちゃんのあこがれでもあるのでしょう。
そして、文字を覚えるのと同じように、「人間はこう描くもの」と覚えてしまったのかもしれません。
そこで、例えば「お友だちをかこう」というテーマで、友だちの体や顔を触ってから描いたり、「自分を描こう」というテーマで自分の顔を鏡で見ながら描いてみてはどうでしょう。
あるいは、視点を変えて、人ではなく、デザインあそびのような絵を描くのもよいかもしれません。
イメージが貧困な子
まずは生活しているときに見かけるイメージしやすいものから
いきなり「これ何に見える?」と尋ねるのではなく、「テレビは四角かな?」「お部屋で丸いものを探してみよう」など、生活の中で子どもがイメージしやすい言葉をかけることがだいじです。
また、五感で感じることは、すべてイメージすることができます。
したがって、五感を使った経験をたくさんするほど、体に強く記憶され、その記憶が創造力のベースとなります。
積極的に五感を使うあそびを取り入れていきましょう。
具体的には
- 細部を観察する力を育てる
同じようなものを並べて、しばらくそれを観察し、違うところはどこかを見つけるあそび
子どもたちの感覚が研ぎ澄まされてくると、今まで見えなかった細部が見えてくるようになります。
- ことばからイメージする力を育てる
お話作りや読み聞かせなど、視覚ではなく、言葉からイメージするあそびをします。
そのあとで絵をかいたり、お話に合わせて歌ったり動いたりと、あそびを発展させます。
日常の中でも創造力を育てるようはたらきかける
子どもたちが頭に浮かんだイメージを、どんどん言葉にできるようにするためには、毎日の保育活動の中で、担任が積極的に話しかけることです。
散歩や砂場あそび、食事やお昼寝の前などが、おしゃべりには絶好のチャンスです。
散歩で雲を見つけたら、「あの雲、何に見える?」、「ソフトクリームみたいでおいしそう」など、雲からイメージを広げたり、何かの形に見える雲を探したりして、みんなでイメージを膨らませるのも楽しいです。
そして、子どもが何かをイメージしたとき、保育士はそれを喜んで受け止めること。
さらに、「○○○に見える雲を、○くんが見つけたよ」と、ほかの子どもたちにも話して、喜びをみんなで共有しましょう。
まとめ
例えば、「みんなが描いた絵をまっすぐ並べて壁に貼りたいんだけど、どうすればいいかな?」というように、子どもたちにあえて相談を持ちかけるのも効果的です。
子どもたちは年齢なりに考えて、大人が思いつきもしないような創造的な答えを出してくれます。
子どもたちが出した答えの通りにみんなで活動してみるのもいいですよ。