どこまで認めていいのやら……。
そんな保育士の子どものお悩み相談にお答えします。

このページの内容は
- イヤが本心かどうか分からない子の対応
- 気に入らないと「イヤ」「嫌い」と言う子の対応
- 「ヤダ」「嫌い」を連発する子の対応
子どもが保護者と離され、寄りかかるだれかを求めているとき、「イヤ」という表現を使いながら、実は、信頼できる特定の大人を探しているということがよくあります。
好きな保育士以外には「イヤイヤ」と大泣きしたり、何かにつけて「イヤ」を連呼したりなど……。
「イヤ」と言っても受け入れてくれる大人なのかどうか?確認している場合も多いのです。
イヤが本心かどうか分からない子
さりげなく自信をつけさせよう
まず自信を持たせてあげることが大事です。
きっと自分を表現できず、不安定なまま年長に進級して緊張感が強いのでしょう。
保育士はJくんのよさを見つけ、周りの子にも分かるように、さりげなく認めてあげたいものです。
そうすることで、しだいに不安がなくなり、安心して自分を表現できるようになるでしょう。
また、「友だちの中に入れたい」とこだわるのではなく、例えばサッカーなら、まず保育士が、Jくんといっしょに楽しんでみてはどうでしょうか。
自信が持てるようになったら、みんなの中にも自然に入れるようになると思います。
人との関わりが楽しいという経験を
人と何かをすることはおもしろい、素直に自分を表現するのは気持ちがいいという体験を、Jくんにもしてほしいですね。
年長ぐらいになると、「表現が素直にできず、仲間に入っていけない個性」を持ったタイプの子がいますね。
でも、いくら個性とはいっても、社会で生きていくうえでは、人とのかかわりが楽しいと思えるほうが、人生を豊かに過ごせるでしょう。
K先生はJくんをよく見て、どんなことならみんなとあそべるのか、得意なものは何なのか?確認してみましょう。
それから、K先生がほかの子とのつなぎ役になって、自然に仲間に入れるように働きかけてみましょう。
例えば、Jくんのやりたい役をやらせて、全員で劇ごっこをしたり、保育士とJくんとのあそびにほかの子を誘ったり。
しばらくは保育士もいっしょにあそんで、みんなともあそべる自信が持てるようにしてあげましょう。
まとめ
自分一人では周りの友だちに近づいていけない子も少なくありません。
そんなときこそ、保育士はきっかけを作ってあげるべきです。
一人になってしまっている子が保育士とやりたいあそびをする、そこに他の子どもたちも加わってくる……というのが自然でスムーズです。
気に入らないと「イヤ」「嫌い」と言う子
友だちに興味を示している点に注目
注目したいのは、Kちゃんが「イヤ!」と言いながらも、友だちに興味を持ち始めてきたことです。
Kちゃんには、率直に自己表現をするよさがあります。
ただ、相手のいやがることまで言ってしまうのは困ります。
その子とあそびたいという気持ちが生まれてくると、我慢しながら自分の要求を出すようになります。
「イヤ」「嫌い」だけではない、別の表現もできるようになっていくでしょう。
保育園での生活は、このような子に自分をコントロールする機会を与える場でもあります。
自分の要求をストレートにぶつけて実現させるのではなく、子どもなりに考えて、相手も納得して実現させる解決方法を見つけ出していきます。
Kちゃんは今まさに、その発達の途中の状態なのです。
みんなの関係を対等に
頭ごなしに注意するのではなく、「言われた○○ちゃんは、とても悲しいと思うよ」のように、Kちゃんの気持ちの中に相手の気持ちを入れていくようにします。
また、嫌いと言われて傷ついている子には、「悔しいね。でも、先生はあなたのこんなところが大好きよ」と、Kちゃんと対等な関係になれるように自信をつけさせます。
大事に育てられすぎて、まだ人の気持ちが分からない子も少なくありません。
だからこそ、多少はつらい経験もして、Kちゃん自身が自問自答することが大事なのです。
そして、ほかの子も含めたクラス全体を、人を傷つけるようなことは嫌だと思える集団にしていきたいですね。
まとめ
できることなら、子どもの言うことをどんどん聞いてあげたいものですが、「けじめ」も必要です。
「けじめ」に対する考え方は、保育士や保護者で個人差があるでしょう。
ただ、「迷惑」と「生命」にかかわることは、譲ってはいけない「けじめ」だと思います。
最低限の「けじめ」は、保育園でもしっかり押さえていくことが必要です。
そして、なんでも「いいよ」と言う優しい大人が、子どもにとって魅力的か?というと、必ずしもそうではありません。
本気でしかってくれる大人もいるほうが、子どもの安定感につながるようです。
つまり、ときには、譲らない「けじめ」も大切なのです。
「ヤダ」「嫌い」を連発する子
「ヤダ」は関心のある友だちへの打診の意味も
Gちゃんは、なんでも「イヤ」と言うのではなく、友だちや保育士に向かって、「イヤ」が出ているようですね。
これは、反応を確かめているのです。
2~3歳前後は、反抗期(自我の芽生え)と言われ、「イヤ」を連発して、大人を困らせる時期です。
ただ、「イヤ」と言っても拒否ではなく、ほんとうは仲よくしたい相手に興味があるのです。
「ヤダ」と言われたらひと呼吸おいて、ほんとうの「NO」なのかを考えるゆとりを持ちたいですね。
けんかも、相手の気持ちを知ることにつながります。
すぐに止めず、少し見守って、危険かなと思ったら、ほかに興味を向けてあげましょう。
子どもの言葉に動じない心のゆとりが大切
Gちゃんは、1歳で抑えられていた自我が芽生えてきたか、または自己主張がゆっくりと出てきているのかもしれません。
ほんとうに保育士や友だちが嫌いなわけではないのですから、保育士は子どもの言葉に動じないことが大切です。
自分の気持ちを素直に表せないのは、Gちゃんが照れ屋である個性でしょう。
ですから、「さっき、嫌いって言ったじゃないの?」なんて、子どもと同じ次元で対応しないことです。
そのためにも、保育士は心にゆとりを持って、この時期の子どもにとっては、「イヤを連発あたりまえのこと」という気持ちで受け入れましょう。
もちろん、自分の対応が悪かったのだろうか?と自分を責めて悩む必要もありません。
「嫌い」と言われたとき、好かれようとしつこくするのではなく、楽しくあそんでGちゃんが関心を持つのを待ち、さりげなく対応します。
そして、友だちとの関わりのときの
- 「やだ」
- 「嫌い」
- 「ばか」
という言葉の中に、「これは私が使っていたのに、どうして取るの」という、ほんとうの気持ちが隠れているのかもしれません。
そこで、
- 「使いたかったのね」
- 「貸してって、言うといいよ」
- 「仲間に入れてって言ってみようか」
と、言葉にできないGちゃんの気持ちをくんで、表現を広げてあげましょう。
まとめ
2~3歳前後の時期の「イヤ」につき合うには、忍耐が必要です。
わがままだと言って、大人が子どもと同じ次元で対応すると、子どもの「イヤ」がより強くなり、気持ちを立て直すことができなくなることもあります。
成長の段階で、どうしても通らなくてはいけない道なのです。
保育士を信頼し、何かをやりたいという意志が表れてきたのだと、むしろ歓迎したいくらいの姿なのです。