そんな保育士の子どものお悩み相談にお答えします。

このページの内容は
- 反応が遅くて関わりが持てない子どもの対応
- 喜怒哀楽の表現が乏しい子どもの対応
- なんでもできる優等生な子どもの対応
保育園のクラス全体の運営が上手くいったとしても、ひとりひとりをみることができてなければ全く意味がありません。
関わりが少ない子どもを出さないためには、子どもと保育者の距離を近づける必要がありますが、そのコツは、たくさんあそび込むことしかありません。
反応が遅くて関わりが持てない子どもに悩んでいます
それぞれの子どもに合ったテンポがある
保育士に対しての好き嫌いの問題ではなく、ほかの子に対するときと同じテンポで対応されるために、Mくんはとまどっているのです。
今は速さを競う状況が社会全体に見られ、反応の速い子は賢い子と評価されがちです。
その結果、反応の遅いMくんのような子が、よけいに目につくのでしょう。
人には、生まれながらに持っている気質があります。
M先生は、周りの人や物に対して注意が向き、テンポが速い外向的なタイプなのだと思います。
反対にMくんは、周りの状況をゆっくり自分の中に取り込んでから反応する、内向的なタイプなのでしょう。
ゆっくり反応するMくんのテンポに合わせて対応し、Mくんが何を感じ、何に興味を持っているのかをきちんと視野に入れ、1日に1回はていねいにかかわるようにしましょう。
スキンシップで仲良くなることを優先
反応が遅いことを嘆くのではなく、Mくんと仲良くなることを考えてください。
なぜなら、保育士が言葉をかけると固まってしまうのは、緊張のためかもしれないからです。
ですから、言葉を言わせようと焦るのではなく、まずは体で触れ合い、Mくんのようなタイプの子どもとの心の交流を図ることが大事です。
なにげなくMくんのそばに行っておしゃべりしたり、ひざに座らせたり、「先生のお手伝いしてね」と誘いかけるなど、体に触れながら一緒に行動するように心がけましょう。
後ろからポンと肩をたたいてみたり、くすぐってみたり、意図的にMくんへの関心を繰り返し示すことで、保育士の気持ちが伝わるのではないでしょうか。
また、Mくんの表情をよく観察して、生き生きと活動する場面があったら見逃さないようにしましょう。
例えば、「Mくん、お外を元気に走っていたね」など、日常の中の小さなことを認めるように努めると、Mくんの自信にもつながります。
まとめ
子どもは体を存分に使うあそびが大好きですから、1日1回はおにごっこのような動くあそびで子どもといっしょに動き回りましょう。
また、製作をしたり絵をかいたりした後、できた作品からお話作りやごっこあそびに発展させていくと、子どもは自分の作品からあそびが作られていくことに喜びを感じるでしょう。
保育経験が少ない1年目、2年目の先生でなくても、ひとりひとりの子どもへの配慮が行き届かないこともあります。
ただ、たくさんあそび込むことで、ひとりひとりと接することができ、関わりが薄くなるようなことはかなり防げます。
喜怒哀楽の表現が乏しい子どもに悩んでいます
その子らしさやその子の世界を見つける
協調性を重視して育てられると、従順ですが主体性のない子になりがちです。
Tくんはおそらく、家庭ではみんなに適応することを期待され、自己表現することを閉ざされて、手のかからない子として育てられたのではないでしょうか。
自分の世界、つまり主体性のないTくんは、トラブルを起こさないで生きる知恵を学んでしまったのかもしれません。
もしそうだとしたら、感情を表に出すことはほとんどないでしょう。
しかし、自分の世界がまったくないという子はいません。
保育士は、小さなことでもいいですから、その子らしさやその子の世界を見つけることが必要です。
そして、Tくんが言ったり、自分の意志でやったりすることを認め、Tくんの世界が少しずつでも広がるようなサポートをしましょう。
そのためには、できるだけ1対1の時間を持って、興味や喜び、悲しみに共感することです。
Tくんが自分の世界を持ち、自主的な活動が見られるようになれば心配はいりません。
何より優先すべきはTくんとの信頼関係
「ぼくの気持ちを分かってくれる先生なんだ」と、感じられるようにすることが、今のTくんには必要なのではないでしょうか。
Tくんの気持ちと真剣に向き合っていると、いっしょに声を出して笑ったり、泣いたりが自然に表現されてきます。
ですから、何より優先したいのは、Tくんとの信頼関係を作ることです。
どんなに喜怒哀楽がないように見える子どもでも、いろいろな思いを心にいっぱい満たしているはずです。
保育士は、子どもの小さな表現を見逃さないようにして、ひとりひとりにていねいに言葉をかけるようにしましょう。
喜怒哀楽の感情をあまり出さないTくんに対しては、うれしいときも悲しいときも、そしてしかるときも、保育士が本気で向き合い、その子の心を真正面から受け止めてあげることです。
真正面からというのは、何かのついでにということではなく、1対1の関わりを深める「時」を、保育士が作ることです。
そして、その中で、Tくんが笑ったり、声をあげたりするのを見逃さないようにし、それに対して共感することが大切です。
まとめ
保育園でも小学校でも、指導者は外向的なタイプが多く、どうしても自分とタイプが違う内向的な子とのかかわりは得意ではないようです。
子どもにとって、指導者とのかかわりが薄いということは、認められていないことと同じです。
共感してくれる人がいないから居場所がない……。
その結果、登園拒否、登校拒否になることも多いのです。
保育士は、自分と違うタイプの子もいるという前提で保育し、自分に合わせるのではなく、子どもをよく見て、それぞれの個性に合わせて対応していくべきです。
自分と違うからダメな子というレッテルをはるのではなく、その子のおもしろさ、よさを見つけるように努めましょう。
そのうえで、子どもたちひとりひとりが満足し、目が輝いているかどうか、充実感の確認を常にしていくことも必要です。
なんでもできる優等生な子どもに悩んでいます
優等生タイプの子どもにはさらなるレベルアップを
保育士は、子どもたちに対して、できたから褒める、できないと困ると見るのではなく、子どもがさらに力を発揮して、園生活を満足できるように援助しましょう。
Gちゃんには、「こうするともっとおもしろくなるよ」と、Gちゃんの世界を大事にしながらアドバイスしたり、さらなるチャレンジを促したり、ともに喜び合ったりするなど、関わり方を工夫してください。
幼児期に大切なことは、やったことが自分の喜びになり、さらにもっと大きな満足感を得たいと、次への意欲を持てるようにすることです。
それが、これから先、困難にぶつかったとき、乗り越えていくパワーになるのです。
「何かができる」よりも人格作りが大切
Gちゃんは頭のよい子ですから、保育士を意識しながら行動しているはずです。
ですから、たぶん、S先生が心配するほど関わりの薄さを感じてはいないと思われます。
でも、幼児期の子どもは何かがやれる、何かができるという能力よりも、人格作りが大事です。
したがって、「なんでもできる優等生だから問題ない」と安心するべきではないのです。
まとめ
なんでもできる子、特に女の子は口が達者で、表現豊かな子が優等生に見えることがよくあります。
保育士は子どもに対して、「あの子は優等生」「この子はがんばりやさん」など、良くも悪くも思い込みを持たないようにすることが大事です。
保育士が見る目を変えると、Gちゃんの年中児らしい姿が見えてきて、自然な関わりが生まれてくると思います。