泣いたり、叫んだり、感情の起伏が激しい子にお手上げ状態です……。

そんな保育士の子どものお悩み相談にお答えします。

このページの内容は
- 突然、相手を激しく攻撃する子の対処方法
- 気に入らないと激しく泣き続ける子の対処方法
- 融通の効かない子の対処方法
- 友だちに噛みつく子の対処方法
結論から言うと、ハッキリと感情表現してくれたほうが保育士としては助かります。
感情表現が激しいのは「何か問題がある」ことがちゃんと見える状態なので、対応するべきだと分かりやすいですから。
むしろ、何も表に出てこない子どものほうが難しいです。
でも激しい感情表現にこそ、その子への理解を深め、仲よくできる手がかりがあるのです。
激しい感情表現にもいろいろな状態がありますから、このページでは4つのケースについてお答えします。
突然、相手を激しく攻撃する子に困っています│保育士・子どもの悩み
年長児クラスの中で、リーダー的存在のYちゃん。
クラス替えがあってもその座をキープして、いつもあそびの中心。
ふだんは穏やかなのですが、おもしろくないことがあるとすごい勢いで相手を攻撃します。
先日もMちゃんと大げんかになって徹底的に攻撃し、自分の気持ちがおさまると、何事もなかったかのように穏やか。
この変身ぶりが理解できません。
そんなお悩みにお答えします。
プライドを傷つけないような対応を
Yちゃんは、たぶん知恵のある子ですが、相手の心の痛みを感じる力が、まだ育っていないようです。
年長ともなると、つらい、寂しい、悔しいなどという経験をして、しだいに相手にも同じ気持ちがあることに気づき、思いやることができるようになってきます。
今までは、Yちゃんの思いどおりにならないときのけんまくの強さと、思いどおりのときの穏やかさ、その両面が、Yちゃんをリーダーとして認めさせていたのでしょう。
でも、年長になると、周囲の子の成長に伴って、リーダーとして求められるものも変わってきます。
保育士はそのつど、Yちゃんのよさを認めつつ、相手の気持ち、仲間から外れる悲しさなど、1対1で知らせていくことがたいせつです。
ただし、「私はできる」というプライドは、意欲にもつながり大事ですから、本人を否定するような対応はしないよう、気をつけましょう。
リーダーでなくても楽しめる経験を
まず、リーダーをきちんと位置付けて、リーダーはどんなことをするのか、みんなで話し合ってみましょう。
そして全員がリーダーを経験する中で、Yちゃんもリーダー以外の立場を経験することが、いちばんよいのかもしれませんね。
相手の気持ちを理解したり、思いやったりできるようになるには、ほかの子の力も借りるとよいと思います。
ケンカは発達のチャンスです。
本人の気持ちをじっくり確かめ、相手の気持ちも聞いて、子どもたちと話し合い、納得して解決できるように方向付けたいですね。
Yちゃんも含め、ひとりひとりの子どもたちを尊重し、よいところを認め合えるように、妥協しないで取り組んでいくことが大切だと思います。
まとめ
リーダー的存在の子どもはプライドが高いものです。
「リーダーなんだから、みんなの気持ちも分かってあげられるといいね」
というように、プライドを傷つけないような対応をしてあげましょう。
気に入らないと激しく泣き続ける子に困っています│保育士・子どもの悩み
5月末には3歳になり、いちばんのお兄さんで体も大きいのですが、落ち着かず、園の環境や友だちに慣れるのに時間がかかっています。
何かをやらせようとしたり、力の強い子にちょっと触られたり、強い口調で何か言われたりすると、激しく泣き続けます。
そんなお悩みにお答えします。
十分に泣かせてあげよう
外見から期待しすぎて、その子本来の姿を見ていないということはありませんか?
Tくんは月齢が高く、体が大きいわりに、内面は保育士の思うところまで成長していないのでしょね。
発達には個人差があって、集団の中での経験や、家庭での過ごしかたに影響されます。
ワーッと泣いたり、すぐに笑ったり、激しく気持ちが変化するのは、3歳児の特徴です。
そして、言葉数の小ない、表現方法の未熟な子どもほど、気持ちが高ぶったとき、言葉が出なくなってしまうのはしかたがないことですね。
こんなときは、理由はなんであれ、だっこしたり、泣きたいだけ泣かせてあげたりして気持ちが落ち着くのをゆっくり待ちましょう。
泣き終わったあとの対応が大切
しばらくは抱いて、興奮がおさまってきたらじっくり話を聞いてあげましょう。
激しく泣く子を、「扱いにくい子」とマイナスにとらえるのではなく、泣くのはあたりまえ、それだけ強い意志や主張があって、言いたいことがたくさんある子なのだと、プラスにとらえてあげたいものです。
そして、新しい環境の中で、新しい経験をしてとまどっている状態だと思います。
泣いているときは、いくら声をかけてもあまり意味がありません。
ただ、泣きながら、自分を立て直そうとしているはずですから、Tくんを信じて待ってあげることが大事です。
そして、泣き終わったときこそ「泣き終わったのね」で終わりにしないこと。
言葉や社会性を育てるチャンスですから、自分の気持ちを泣くのではなく言葉で表現できるように、手助けしましょう。
まとめ
3歳児ですと、早生まれで同じクラスの子どもよりも体が大きくても、泣いて感情を表現することは少なくありません。
泣き終わるのを待って、どうしたかったのか?何が嫌だったのか?子どもに聞いて言葉で表現できるようにサポートしてあげましょう。
融通の効かない子に困っています│保育士・子どもの悩み
そんなに激しく怒ることではないのに、まちがいは絶対に正し、融通のきかない年中児のEくん。
友だちが、シール帳にはったシールをはがして、元の台紙に戻したのを見て、「なんでそんなことをするんだよ!」と相手をたたく……。
おもちゃを違う箱にしまうと、「ここじゃない!」と、その子をおもちゃでポカポカ……。
優しく言おうよと諭すと、「こうしないと覚えないんだよ!」と怒ります。
そんなお悩みにお答えします。
保護者と親しくなりましょう。
もしかしたら家庭で、保護者やお兄ちゃん、お姉ちゃんがEくんと同じような対応をとっているのではないでしょうか?
家庭で「よい子」でいたいEくんが、無意識のうちに家族の態度をまねてきたことで、きまじめさが身に付いてしまったのかもしれません。
家庭環境が変わらなければ子どもは変わりません。
まずは保護者と親しくなって気軽に話せるような状況を作りましょう。
そうすると、さりげなくEくんの様子を話したり、家庭での対応を聞いたりできますね。
Eくんと同じレベルで対応しない
Eくんが融通の効かないことをしたとき、「優しく言おうよ」と声をかけるのは、それこそ融通の効かない対応になっていませんか?
Eくんの主張は間違いではありませんが、すぐに手が出るのは年中児としては少し幼いです。
ですから、ほかの子にはほかの子の考えがあることに、Eくんが気づくように導きたいですね。
Eくん本人には、「たたいたり、ぶったりしなくても、みんな、言葉で言えば分かるよ」と、根気よく伝え続けていくことも必要ですが、もっと具体的な方法もとってみましょう。
たとえば、S先生が失敗したところをあえて見せて、「Eくん、どうしたらいい?」と、問いかけてみるのです。
また、他の子がまちがえた場面で「たたいたりぶったりしなくても、言葉で言えば分かるよね。」と差し込んでおくのです。
さらに、みんなの意見を聞く場面では、最初にEくんの考えを聞いて、後から他の子の意見を聞くと、自分とは違う考え方もあることが分かるでしょう。
すると、自分とは違う意見を持った子どものほうが多いケースにも巡り合うことでしょう。
まとめ
家庭で言われていること、しつけられていることは、子どもにとって非常に大きな意味を持ちます。
家庭ではどんな様子なのか?保護者から聞き出せるくらいの関係を作ることが大切です。
そして、子ども本人が「いろいろな子どもがいて、いろいろな考え方があるんだな」と実感できるような体験をさせてあげましょう。
友だちに噛みつく子に困っています│保育士・子どもの悩み
すぐに友だちに噛みつく年少児のKちゃん。
Kちゃんひとりに手をかけられず、あっという間に噛みつくので、止めることができません。
相手の子に深い噛みあとが残り、その保護者から苦情がきたこともあります。
何回注意しても返事だけで、また繰り返します。
そんなお悩みにお答えします。
家庭との連携が大切です
まずは噛みつく子の家庭と連携をよくとることが大事です。
保育園での様子を伝えるだけでなく、家庭での保護者の関わり方や気持ちを言葉で伝えられているか?など、ストレスの要因はないか、しばらく様子を見る必要があるでしょう。
人間の口は、吸ったりしゃぶったりして、外界を知るためには便利な部分ですし、噛むことは、私たちが本来持っている、本能的な行為です。
ただ、3~4歳くらいになると、自制心が育ってくるので噛むという行為は減ってくるものです。
しかし、たびたび、友だちを噛む行為を繰り返すというのは、それが十分に育っていないためと思われます。
活動性があるのだけれど、自分の気持ちを集団の中でうまく表現できないのでしょう。
その子の中に不安定な部分はないか、様子をよく見てください。
保護者への報告
まず、噛まれた子の保護者に報告しますが、噛んだ子が悪いと言うのではなく、こちらの目が行き届かなかったことを謝りましょう。
次に噛みついた子の保護者に報告するときは、伝えかたによっては悪循環を招くことにもなりかねませんので、慎重さが必要です。
保護者が子どもどのように受け止めているのか?子どもが思いどおりにならないことが多くないか?など、家庭の様子をそれとなく聞いておくべきです。
噛むのは悪いこと。でも発達のチャンス
噛むのにも必ず理由があります。
友だちに言葉で気持ちを伝えられない代わりに噛んでいると思われるからです。
ですから
- 「貸して」
- 「入れて」
- 「順番ね」
など、かかわりの言葉も学ばせたいところです。
言葉で意思が伝わるようになれば、自分をコントロールする力も発達しますから、自然に噛まなくなるものです。
ですから、「どうしたかったのか?」を1対1で聞いてあげましょう。
そして、相手の子にも周りの子にも確かめたうえで、
噛んでしまった子はどうすればよかった?
噛まれた子はどうすればよかったのか?
お互いの意思が伝わるようにするのです。
もちろん、保育士は簡単な言葉で噛んでしまった子と噛まれた子の思いを整理したり橋渡しをしたりする必要があります。
噛んだ、噛まれたで終わりにしてしまうのではなく、お互いの意思をちゃんと伝えられるようになる「発達」のチャンスです。
まとめ
噛んでしまった場合、対処こそ1番大切です。
まずは、噛まれた子の保護者への報告はできるだけ早くするべきです。
相手から連絡があってからでは遅すぎます。
そして、噛んでしまった子が噛んだ原因は何なのか?正確につかんで、「噛まなくても解決できる」ように導いてあげましょう。
感情表現が激しい子について全体のまとめ
感情は脳の本能に近い部分で培われ、ギャーと泣くと相手がびっくりする、しかられるなど、周りの人と関わることによって、感情の表しかたを学習します。
つまり、感情が手がかりとなって人間関係が作られていくのです。
感情の表しかたがいつまでも強い子は、喜び、悲しみ、怒り、恐怖、不安の起伏が激しい気質を持っているように思われます。
周りの人が関わって、感情の表しかたを修正したり、補ったりして、人間関係をうまく作れるようにしていきたいものです。
ただし、感情の表現が豊かと受けとるのか、感情の起伏が激しすぎると見るのか、判断は大人の価値観にもよります。
その子の特性を押しつぶさないようにしたいものです。