そんな保育士の子どものお悩み相談にお答えします。

このページの内容は
- いつも一番になりたくてウソをつく子どもの対応
- ウソでごまかそうとする子どもの対応
- 物を隠してウソをつく子どもの対応
まじめな保育士ほどウソを深刻にとらえ、子どもを追い詰めてしまいがちです。
しかし、子どものウソの多くは一時的な問題のないものですが、なぜウソをつくのか?その奥にある心を見つめたいものです。
いつも一番になりたくてウソをつく子ども
ウソつきではなく前向きな子ども
3歳児によくある姿です。一番になりたくて、前へ前へと進んでいるSくんの気持ちを受け入れ、次のような言葉かけをしてみるとよいでしょう。
- 「トイレに行ったけど、おしっこは出なかったの?」
保育士の言葉どおりに、トイレに行ったSくんにたぶんウソはないですね。
3歳の子どもに分かるように、「トイレで、おしっこをしてきてね」と言うとよいのではないでしょうか。
一番になりたくて、したいのにしてこなかったのか、言われたからトイレに行っただけなのかを、確認しましょう。
- 「トイレに行っただけじゃなくて、おしっこをしておけばよかったね」
食事中に「トイレ」と言う子には、ごはんを食べているときに席を立つと、周りの子が落ち着かないから、その前に用を済ませるということを伝えます。
- 「いっぱい食べたのね。これとこれね」
3歳児の「全部食べた」は常とう句で、「全部」の意味は自分中心でさまざまです。
好きな物だけを食べたときや、「おなかいっぱい」の意味のときもあります。
保育士の「全部」と子どもの「全部」では、意味が違うこともあります。
言葉を獲得していく時期ですから、「いっぱい食べたね」と受け入れて、食べた物を具体的にひとつひとつ聞いて、「全部」の意味が分かるようにしていきましょう。
いろいろな一番を教えるべき
ウソを問題にする前に、いろいろな一番があることや、一番だけがよいのではないことを教えていきます。
ゆっくりでも、「きれいに手を洗えた一番ね」「とてもていねいだったね」など、Sくんが気づくような言葉かけを意識しましょう。
お弁当も、全部食べたか調べる必要があるのでしようか?
もし、早く食べた子から順に、楽しいことができるとしたら、Sくんの気持ちも分かります。
「みんなが食べ終わったら、いっしょにやろうね」と、子どもの気持ちに寄り添って、Sくんにも分かるように伝えていくことが大切です。
幼児期にウソを繰り返すのは、保育士に認めてもらいたい場合に多く見られます。
ですから、「ウソ」と決めつけて言うのはやめたいですね。
保育士は、ウソをつく1歩先にある子どもの思いや、ウソをついて隠したい過去の事がらに思いをはせて、子どもの心を受け止めるよう心がけましょう。
まとめ
私は、給食になると「おなかが痛い」と訴える子どもに遭遇することが多かったです。
予想通りですが、食べたくない物があるときに痛くなるケースがほとんどでした。
子どもは食べたくないと思っただけで、ほんとうにおなかが痛くなることがありますが、痛いと言えば食べなくてもよいという習慣がつくのも困ります。
また、大人は偏食が許されて、子どもが許されないのも疑問です。
偏食への対応は、保育園全体で話し合っておきましょう。
訴えがあったら「お熱がなくても、おなかが痛くなっちゃうのね」と気持ちを受け入れて、「おなかの、どこが痛いの?」「朝、ウンチしてきた?」と確認し、原因を把握しましょう。
保育士との関わりを求めていることもありますから、気持ちを分かろうとするプロセスが大事です。
もちろん、病気と判断されるような場合は速やかに対応します。
ウソでごまかそうとする子ども
できるだけ善意に解釈しよう
「たたいていなかった?」とみんなの前で決めつけてしまった保育士は、Kくんを追い込んで、ウソを言わせる状況を作り出してしまったのではないでしょうか。
保育者はその現場を見ていないのですから、ウソだと分かっていてもできるだけ善意に解釈して、子どもを追い込まないようにすることです。
また、みんなの前で名指しで、「ウソをつくのはよくない」と断言するのも、適切な対応とは言えません。
子どもの心の傷になってしまいます。
確かめるときは一対一で、「こんなふうに聞いたけど、そんなつもりではなかったんだよね」と、Kくんが話せる余地を残しておきましょう。
こんこんと言い聞かされるのはつらいものです。
してはいけないポイントを押さえ、短くしっかり伝えます。
また、「ごめんなさい」と言えば済むというしつけも考え直したいですね。
訴えにきた子どもたちとKくんとの間で解決させる
Kくんは小屋をたたいただけで、いじめている認識はなかったのではないでしょうか。
なのに、保育士に「たたいていなかった?」と否定的に聞かれたら、「ノー」と否定で返すしかないですね。
ウソは、このようにちょっとしたズレから生じることもあります。
しかし、小鳥がかってに騒いでいるのか、怖がっているのか、保育士とのかかわりの中で、その因果関係をKくんに認識させることは必要です。
訴えてきた子には、「どうしてKくんに言わないの?」「かわいそうだからやめようって言おうね」と言い、その場へついて行ってようすを見守りましょう。
現場を見ていた子どもたちとKくんとでコミュニケーションをとらせ、子どもどうしで解決へ導くのが理想です。
そうでないと、告げ口はよいことと認識されてしまいます。
行き過ぎた行為を言葉で表し、方向づけした指導をすべきです。
そうすることで、子ども同士の関係が育ち、問題を解決する能力が育っていくのです。
まとめ
- ウソをつく後ろめたさ
ウソをつくのは発達の表れで、3歳後半くらいからウソをつくようになると言われています。
保育士はウソをつく子どもの背景を考え、否定するのではなく、受け入れる気持ちで接してください。
子どものほうもウソと分かっていて、つらさを感じているときがあります。
保育士は、そこを分かってあげたいですね。
ウソをつく後ろめたい気持ち、つまり負の罪悪感を経験することは、育ちの過程で大事なことです。
そのような経験をすることで、人の気持ちを知って成長していくのです。
- 想像性を広げるウソと心配なウソ
幼児期のウソは想像性を広げ、ユーモアの原点がその中にあると思います。
しかし中には放置しておくと、将来、善悪の判断基準が人とずれてしまうような心配なウソも、まれに見られます。
対応を考える前に、想像性を広げるウソと、心配なウソがあることを認識しましょう。
幼児のウソは、喜びの表現を広げたものなど、ほとんどが罪のないものですが、人を傷つけたり、困らせたりするような作為的なウソの場合は、きちんと向き合って、いけないということを分かってもらうようにしましょう。
- 子どものウソを許さない環境は心配
保育士にはまじめな人が多く、ウソを善悪だけで判断し、子どもを追い込んでしまいがちです。
その結果、子どもは責められれば責められるほど、ウソをつかずにはいられなくなってしまいます。
幼児のウソはすぐにウソだと分かりますから、笑ってあげるような、おおらかな対応をしてほしいものですね。
今は、保護者も同様に、狭い価値観でしか判断できない人が多くなっています。
そのため、ウソを許せず、虐待につながる悲惨なケースも見られる時代です。
このように、園でも家庭でも、ウソがひとつも許されない環境で育った子は、吐き出し口がなく、閉じこもってしまったり、親に本音を言えの叫びととらえ、対応してほしいですね。
その点を考慮し、心に余裕を持って、ウソをユーモアや心の叫びだととらえて対応するべきです。
物を隠してウソをつく子ども
レッテルを貼られてしまわないように
個人への対応は、ちょっと確認する程度ならよいと思いますが、子どもを追い込むほど問い詰める必要はありません。
子どものウソはせつな的ですし、意図していないときもあるのです。
保育士が救ってくれたとか、見て見ぬ振りをしてくれたなど、その子が罪悪感を感じるような状況なら、繰り返すことはないはずです。
集団への対応は、ルールを知らせる意味で、絵本やお話などで伝えるとよいですね。
なぜそうなったかを考えると、みんなが欲しがりそうな物を見せびらかすことが問題だと考えられます。
みんなの欲しがる物を保育園に持ってくることはどうなのか、みんなで考えるきっかけにしたいものです。
ウソつきの特性の子がいるわけではなく、いろいろなことが関係して、ウソをつく状況が生まれてしまうのだということを、頭に入れて対応しましょう。
一番心配なのは、周りの子どもたちに「ウソつき」と見られ、友だちとの関係が悪くなることです。
保育士がみんなの前で厳しく注意する、そのことがその子を見る周りの目になっていくことを認識し、まちがったレッテルをはられないように注意してください。
犯人と断定しないで心にトゲだけを残す
このように物を隠すことは、4歳後半~5歳にかけてよくあります。
いっとき借りるとか、見えない場所に置くという感覚です。
初めてやったときの事後指導が、しっかりなされないと繰り返すこともあります。
初めてのときも、繰り返しているときも問い詰めるのではなく、もう一歩踏み込んだ他押送を心がけましょう。
- 人の欲しがる物を持ち込んで自慢しないよう注意を
「持ってきた子には、「みんなに見せたかったのね。でも、大事なものは、おうちで楽しもうね」と、みんながうらやましくなる物は保育園に持ってこないこと、自慢しないことをきちんと伝えます。
- あえて犯人と断定せず、心にトゲを残す
クラスのみんなには、「見つかってよかったね」「でも○○ちゃんは、見つかるまで心配だったよね」「なくなっても、ちゃんと探せば必ず見つかるんだよ」と、持ってきた子の心配な気持ちと、隠しても必ず見つかることを伝えます。
また、隠した子を断定しないで話すことで、その子の心にトゲを残すことになります。
トゲが痛む、そのつらい経験が成長していく過程で大切なのです。
まとめ
人の物を盗む・隠すを繰り返す子がいるとき、保育士は、子どもをよく観察してみましょう。
保護者からクレームや苦情を言われたときは、当事者にも他の保護者にもストレートに伝えるのは避けます。
トラブルになりかねませんから、事実を知っている場合でも、「事実かどうか気をつけて見てみます。」と対応します。
このような行為を繰り返すのは、何か理由があるはずです。
要因を探りながら、その子の心に響くテーマの絵本やお話を聞かせたいですね。
ケースにもよりますが、犯人探しのようなことはやるべきではないでしょう。